JAGRE

交通事故死傷者を削減し後発開発途上国で暮らす人々の幸せに貢献したい

「不慮の交通事故が発生した際には、救急車が現場に到着し、病院へと搬送される」環境が、日本で暮らす私たちの日常では当たり前のことです。しかし、交通事故が発生しても、救急車が一向に現場に到着しない、病院に辿りつけずに、そのまま路上死するケースも少なくありません。これは実際に、私たちがラオス人民民主共和国で体験した、もしくは、聞き及んだことです。こうした深刻かつ過酷な状況に対して、ラオス人民民主共和国ではボランティアの救急隊が立ち上がり、幾多の苦難を乗り越え、救急車の運用、病院前医療等の活動を行い、現在では9団体の約500名ものボランティアが国との協力のもと、交通事故死傷者の削減に日々多大な貢献しています。

交通事故に関して2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の持続可能な開発目標（SDGs）では、17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットを掲げ、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標として示されています。そのうち、「3．すべての人に健康と福祉を」には、「3.6　2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる」というターゲットが掲げられ、各国でその取り組みが加速されています。日本では、道路環境整備や法整備が進み、自動車技術の進歩、救急救命技術の進歩、交通安全教育の普及・推進など複数の削減施策・対策を経て、年間の交通事故死者数は4,000人を下回るまで減少しています。一方で、開発途上国の中でも特に後発開発途上国では、過去の日本がそうであったように経済発展の中で自動車利用が拡大し、その過程で現在交通事故件数、死傷者数の増加が社会的な問題となっています。

その問題に対して、「交通事故死傷者を削減し、後発開発途上国で暮らす人々の幸せに貢献したい」という強い想いを持つ人間が繋がり、組織された団体がJAGRE（国際交通救急研究会：Japan Association for Global RTA & EMS）です。

JAGREには医学、医療、救命救急学、情報工学、交通工学といった異なるバックグラウンドと専門性を有した研究者や実践者が存在しており、互いの強みを生かして、開発途上国における救急活動の高度化ならびに交通事故の削減を目的とした研究開発と、研究開発を通した救急活動支援を行い、交通事故削減を目指す取り組みをラオス人民民主共和国との協働のもと実践してまいります。是非、JAGREの活動に、ご理解・ご協力・ご支援を賜りたいと存じます。

2020年5月
JAGRE　代表　中村　俊之