システム開発

救急医療サービス(EMS)支援システム


交通事故を減らすには、交通事故がどのような場所や状況において、どのようなけがを引き起こしているかを知ることが重要です。

現状、ラオスの交通事故に関して(発生場所・時間・状況など)情報が記録されておらず、けが人の記録は紙のまま保存され、事故データを分析できていない状況です。そこで、今後、救急隊の活動内容を記録し、そのデータを救急車から病院に事前伝送するシステムを導入する計画です。このデータを元に、教育・道路整備・交通違反の取り締まりに反映させ、交通事故の削減に活用していきます。

スマートフォンのタブレットで操作できるWebアプリケーションなので、日常的にスマートフォンを使用している救急隊員にとって操作は簡単です。これにより、今まで紙で保存されていた記録を蓄積データとして分析、活用することが可能になります。

救急車搭載のスマートフォンの操作

1. 事故の状況やけが人記録の電子化・データ分析


救急車の出動から現場到着、救命措置、病院到着まで、活動の流れに沿って操作することで、それぞれの時刻が記録されます。蓄積された活動記録のデータを分析し、交通事故を減らし救命救急活動の高度化を図ります。

受傷者情報の入力から伝送のフロー

具体的には、次のようなデータベースの活用が考えられます。

【データベースの活用領域】

  1. 交通事故の原因の把握(道路・車両・運転ミス・交通違反など)と重点対策
    交通事故が集中する時間や場所の分布・原因の解析
    事故多発地点対策、交通違反の取り締まり、交通安全教育、車両対策などの対策への反映

  2. 都市計画・道路計画への反映

  3. 車両設計への反映
    途上国特有の事故対策

  4. 事故防止のための運転制御情報への活用

  5. 事故の特性を把握し、救急隊のトレーニングに反映させる
    頭部外傷が多い場合は、頭部外傷ケアのトレーニングに注力するというように、分析結果をトレーニングに活用

2. 病院前情報の事前伝送


救急車内からけが人のデータを病院に伝送し、病院では設置されたモニターを見て、搬送されるけが人情報を確認します。複数名の患者が搬送される場合や、搬送される患者の症状に合わせて、事前に病院側の態勢を整えることで、人命救助の一助となります。

モニターには、病院に向かう救急車の位置と搬送される患者の情報が表示されます。患者情報にはけがの部位とその重症度が示され、重症度の高い患者には赤いラベルが付されることで、病院側は受け入れ態勢を事前に整えることが可能となります。

救命救急センターに設置されたディスプレイ

設置されたディスプレイ画面
画面
左側:病院に向かう救急車の位置が示される。
画面右側:搬送される患者の情報が表示される。

3. 救急車の位置情報管理


スマートフォンのGPS機能を活用し、救急車の位置情報を把握することができます。発車係(ディスパッチャー)が、位置情報をふまえ事故現場に最も近い車両に出動指示を出せるようになることを目指しています。将来的には、迅速・効率的に救急車を運用するための指令センターを設置する予定です。


これまでの活動

2017年、ビエンチャンレスキュー1623に、プロトタイプとして救急車の現在位置を測定するためのGPS装置を寄贈し、発車係(ディスパッチャー)が事故現場に最も近い車両に出動指示を出せるようになりました。


  1. 救急車にGPS機能付きのスマートフォンを搭載

    • ビエンチャンレスキュー1623の救急車各車両に現在位置を測定するGPS機能を備えたスマートフォンを寄贈

    • 車両位置、走行速度、エンジンのオン・オフ状態などを計測・記録


  1. 運行管理センターのモニターで車両位置情報を監視

  • 運行管理センターのモニターで、救急車等の車両位置情報を監視

  • 救急車、消防車、コマンドカー等それぞれの車体の位置を地図上に表示

  • 同時に車種、ステータスをアイコンのカラーで識別表示

  • 救急要請を受けた発車係(ディスパッチャー)が事故現場に最も近い車両に出動指示 

運行管理センターのモニター画面
【ステータス(矢印の塗りつぶし)】 赤:move 黄:stop 青:off 紫:last data
【車   種(矢印の縁どり)】 赤:消防車 黄:救急車 青:機材車 紫:その他