保健人材育成

ラオスの保健医療の実情 


ラオスは、諸外国の支援を受けながら様々な保健分野の課題に取り組んでおり、国連持続可能な開発目標(SDGs)の指標において改善がみられています。しかし、下記の表が示す通り、日本や東南アジアの近隣諸国と比較するとその差は明らかで、保健医療サービスの更なる高度化が求められています。

ラオスでは、医療を受ける必要があっても、様々な障害があり、医療機関の受診が困難なケースが見られます。十分な医療資源が整った病院に行くための交通手段がない、あっても何時間もかかるといった交通アクセスの障害、経済的な障害、そして家族に許してもらえない、受診の必要性を知らないといった社会慣習的な障害もあります。現在、ラオスの保健医療分野において国の最重要課題はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の導入であり、それにより全ての人々が負担可能額医療を受けられる社会を実現することが求められています

ラオスにおける救急医療サービス(EMS)


ラオスでは、経済発展と自動車交通の増大にともない、交通事故の死傷者数は増加傾向にあります。交通事故で致命傷を負った患者は、病院へと運ばれることもなく、路上で亡くなっていくことも多いのが現実であり、10年前までは、ラオスでは路上死が「日常」でした。

現在、ラオスにおいては公的な救急搬送サービスこそありませんが、毎日繰り返される路上死に心を痛めた若者が立ち上がり、ボランティアによる救急搬送が開始されました。市民ボランティアで構成される民間の救急隊の活動は、ここ数年で首都ビエンチャンを中心盛んになり、現在ビエンチャンの救急搬送を担っているのは、8つの救急隊です。彼らは、活動資金を寄付で賄いながら、不十分な資機材を駆使し、24時間体制で無償の救急搬送サービスを提供しています。しかし、救急隊の教育システムや搬送先医療機関との連携強化など活動をより効率化、高度化させるための課題が累積しています。

保健人材の育成


ラオスでは、救急隊員に対して一定のトレーニングや研修が実施されていません。国が定める「救命救急士」の資格制度がなく、救急隊員の能力には差が見られます。今救急隊に求められていることは、一定水準の救急医療を全ての人に受けてもらえるよう、救護活動の質を向上させることです。

私たちは、ビエンチャンで活動する8の救急隊の隊員がけが人の苦痛の軽減を図、悪化を防止するための医学知識技術を身につけられるよう、段階を追って研修等を実施しています単に、研修会を実施するだけでなく、ラオス国内において自立し、かつ持続可能な救急医療サービスが展開されるようサポートしていきます。

トレーニングの様子(2018年)